AI×ECM

AI活用によるECMプロセス改革でビジネス環境変化に対応
1.ECM領域への期待
近年、ECM (Engineering Chain Management)領域において設計開発を中心としたAI活用は、市場ニーズの多様化・複雑化に迅速に対応するための有効手段として注目を集めています。特に労働人口減少に追随した設計ノウハウ継承、経営リソースの最適化による工場スループット最大化、製品企画・開発から試作・量産移行までのリードタイム短縮、次期製品設計の高信頼性・高付加価値化に向けた顧客利用環境からの情報活用など、幅広い領域への適用が想定され、期待が高まっています。
これらの実現に向けて、知識情報データベースを基盤としたAI活用による設計業務の高速化、部門間の情報連携によるフロントローディング(※1)型のラピッド開発(※2)がこれまで以上に重要になってきます。
- 後工程で顕在化してくる不具合や課題を、より効果的な対策を施しやすい開発初期に解決しておく手法
- 高速アプリケーション開発と訳され、プロトタイプ開発と反復型開発を組み合わせた開発手法
2.設計ノウハウの共有
設計領域における深刻な問題として、企業内における設計情報のサイロ化と設計ノウハウの属人化の問題が挙げられます。
設計・開発段階で生成された知識情報を体系的に収集・管理・蓄積し、類似設計の流用を可能にすることで、圧倒的な設計リードタイムの短縮と個人依存の解消、設計ノウハウの次世代継承、設計品質の標準化を実現することができます。この知識情報の蓄積がAI×ECMを実現する重要な基盤となります。
3. 設計プロセスの最適化
製品企画・設計、試作から量産移行までのリードタイム短縮は、市場変化への追随・機会損失の回避のために必要不可欠です。また、顧客要求の多様化により仕様変更が日常化する中、設計者は仕様変更による生産工程や調達部品、製品品質への影響度をシームレスに評価する必要があります。
知識情報とAIの組み合わせにより製品要素の構造をモデル化し、製品要素の変化に応じた生産工程や調達部品、製品品質への影響度を早期に特定することによって、仕様変更に伴う試作から量産移行までの期間短縮を図ることができます。また、これまで後工程で発見されていた課題を設計初期段階で発見・解決することによって、初期不良の未然防止、製造コストの低減、市場投入までのリードタイム短縮が可能となります。
4. データ活用プロセスの確立
ベースとなる知識情報データベースとAI適用で効果を創出するためには、「プロセス策定」と「情報のデジタル化」が不可欠です。「プロセス策定」では段階ごとの製造性検証(製造工程で問題となり得る箇所の特定)が重要です。また、「情報のデジタル化」にあたっては、設計~製造~保全など製品ライフサイクルに関わる各工程をBOM(Bill Of Materials)やBOP(Bill of Process)でつなげるために、Bo"X" (Bill of X)を基軸とした共通データ基盤(下図イメージ)を整備することが重要です。
Bo"X"を中心に様々な構造化・非構造化データを紐づけ・蓄積し、構築した知識情報データベースとAIの組み合わせによってECMの各領域を最適化します。

図 製品ライフサイクルの各工程における共通データ基盤(PLMのイメージ)
5. ECM変革に向けた企画構想の策定
エンジニアリングチェーンの改革にあたっては、将来のありたい姿からバックキャストで検討するアプローチが有効です。
まず、トップダウン思考の全体最適での改革ポイント、ボトムアップの現場課題解決という両面アプローチで推進し、ヒアリングを通じて関係役員や部門キーパーソンの想い/考えを咀嚼(そしゃく)しつつ、ロードマップを策定する際の大きな方向性、領域を可視化します。
次に、製造や設計の現場観察と関連部門への業務ヒアリングを実施し、現場や業務の現状およびデータ活用、関連部門との情報連携やデータ項目レベルでの関連性を把握します。
Ridgelinezは、コンサルタントと経験豊富なシステムエンジニア(SE)が一体となり、実現性のある企画構想策定を支援します。
このように、エンジニアリングチェーンを起点とした改革は大きな可能性を秘めています。Ridgelinezでは、AI活用によるECMプロセス改革により、製造業のDXを支援します。
AI×エンジニアリングチェーン サービスメニュー
- 知識情報データベースの構築支援
- 設計・製造連携によるフロントローディング型の開発プロセスのデザイン
- エンジニアリングチェーン改革による試作リードタイム短縮支援
- BoX(Bill of X)を基軸としたプロセス間の情報連携のデザイン
- ECM×SCMスキーム構築に向けた企画構想策定支援
AI×エンジニアリングチェーン 事例紹介

自動車部品メーカーにおけるDX支援
C.A.S.E(「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング・サービス)」「Electric(電動化)」)・脱炭素・需要減等、環境変化が著しい自動車業界において、完成車メーカーを支えるTier1部品メーカーであるクライアントは、既存ビジネス強化・売上拡大を経て新規ビジネスを創生し、競争優位性を確保していくことを課題としていました。
Ridgelinezは、クライアントの事業変革を実現するためにトップダウン思考の全体最適での改革ポイントとボトムアップの現場解決という両面アプローチでDXを推進し、経営視点のロードマップ策定・DXに向けた現場課題の体系化・中長期推進計画・データドリブン経営を支えるデータ利活用基盤のシステム計画・人材育成計画等を策定し、提供しました。
特に、製造工場のあり方、デジタル化、設計プロセスのあり方などについてのビジョンを業務に反映することによって、クライアントは今後10年にわたるDXジャーニーの道標を持つことができました。

情報機器メーカーにおける製品企画支援
情報機器メーカーのあるクライアントは、コモディティ化が進展するエッジコンピューターの競争優位性を確保するという課題を持っていました。
これまでの商品企画プロセスは、性能、品質、価格など、技術起点のプロダクトアウト志向でしたが、Ridgelinezは、利用シーンを想定した調査や有識者へのインタビューを通じて、デザイン思考によるプロダクト企画プロセスを構築し、社内の開発基準や販売部門との役割分担などの変革を進める支援を行いました。
その結果、提供ソリューションの他社アライアンスも視野に入れた商品企画を行うことにより、他社に対する優位性を確保することができました。